静電気対策の専門家が語る!イオナイザーのトラブルと具体的な対策
1. イオナイザーの役割と基本原理
静電気は目に見えず、発生の把握が難しいため、製造現場で様々な問題の原因になります。
例えば、電子部品や精密機器を扱う際に静電気が引き起こすトラブルは、製品の品質低下や故障、ライン停止など深刻な影響を及ぼします。
また、静電気によって内部の電子回路部品にダメージを受けた製品が、工程内検査や完成検査のタイミングでは良品の判定であっても出荷後、早い段階で故障するトラブルも発生してしまいます。
このようなトラブルを未然に防止するために、静電気対策としてのイオナイザーは重要な役割を果たします。
イオナイザーは、イオンを発生させることで製品の表面に帯電した静電気を中和し、品質保護を行うものです。
静電気対策の性能向上が求められる昨今において、多くのメーカーが以下のような機能を有したイオナイザーを販売しています。
- アース端子の設置:
電位基準となるアース端子を設置し、安定したイオンバランスを保つ。 - イオンバランス状態の監視機能:
バランスが崩れた際の異常通知機能で安定した静電気除去を可能にする。 - 放電針の汚れ・摩耗検知:
汚れや摩耗によりイオン放出量が低下した際にメンテナンス時期を通知する。 - ワークのセンシング(放電電流の監視):
ワークの電位を検知し(放電電流の変化)、効果的な除電を実現する。
このように、様々な対策を講じても工場における静電気によるトラブルをゼロにすることは難しい状況です。
2. イオナイザーの一般的なトラブルとその対策
イオナイザーは静電気対策に欠かせない機器ですが、運用にはいくつかのトラブルがつきものです。
今回は電子機器の製造工程に特化したトラブル事例とその対策について詳しく説明します。
トラブル例①:イオンバランスが崩れて除電器(イオナイザー)が帯電器に変わってしまう
- 不具合内容:イオンバランスが崩れた結果、イオナイザーがプラス又はマイナスのどちらかのイオンを大量に放出し、除電が機能しなくなる。
- 原因:イオナイザー内部のアース回路が断線してしまうことが原因で、プラスとマイナスのイオンバランスが崩れる。
- 対策:独立した電源回路を持つ電位センサを追加することで、除電後のワークの電位を測定し、基準内の電位まで除電出来たかを監視する。
- 商品例:Panasonic EF-S1HS、EF-S1C
ある自動車部品メーカーでアース断線による逆帯電が発生した事例が報告されています。イオナイザーがアース断線により基準電位を失い、片側のイオンのみが大量に放出されてしまいました。
この結果、ワークに逆帯電が発生し、除電が正常に行われませんでした。
このようなトラブルを防ぐため、後工程に表面電位センサを追加し監視する事で『工程保証』が可能となります。
トラブル例②:ファンタイプイオナイザーが機能しない
- 不具合内容:ファンが回転していないため、放電が正常でも除電効果が発揮されない。
- 原因:ファンの故障にも関わらず、ファンが動作しているかどうかの確認がされていない。
- 対策:ファンエラー検知機能を備えたモデルを使用することで、ファンが停止した場合に自動的にエラーを通知することができます。
- 商品例:Panasonic ER-F12A
通常のイオナイザーは放電監視機能を持っていますが、ファンの動作はチェックしていません。
そのため、放電が正常に行われていても風が出ていない場合、除電効果が低下します。
ファンエラー検知機能付きのモデルを使用することで、こうした問題の早期発見が可能です。
トラブル例③:スポットイオナイザーが機能しない
- 不具合内容:エアー回路の電磁バルブが閉じており、エアーが供給されていない。
- 原因:エアー供給の有無が監視されていないため、エアーが供給されなくても正常動作を続けている。
- 対策:エアー監視機能付きのイオナイザーを使用することで、エアーの供給が途切れた場合にエラーを通知する。
- 商品例:Panasonic ER-VW
一般的なスポットイオナイザーは、エアーの供給状況を確認しないため、エアーが出ていない状態でも、放電していれば正常信号を出力し続けます。
この問題を解決するには、供給エアー検知機能を備えたモデルを導入することが推奨されます。
トラブル例④:プリント基板で除電ムラが発生し、逆帯電している部品がある
- 不具合内容:イオンが不均一に供給され、逆帯電した部品が発生する。
- 原因:強力なイオンが放出されるパルスACやパルスDCタイプのイオナイザーを使用したことで、ワーク全体の平均電位が基準内であっても、一部の部品が逆帯電を起こしてしまう。
- 対策:高周波ACタイプのイオナイザーを使用することで、逆帯電の発生を防ぐ。
- 商品例:Panasonic ER-F12A、ER-VS02、ER-VW
プリント基板のように複数の部品が搭載されている場合、強力なパルス式イオナイザーはワークの全体平均電位しか見ていないため、一部の部品には逆に静電気が溜まってしまうことがあります。
高周波ACタイプのイオナイザーは±10V以下の範囲で除電でき、クーロン力を利用することで逆帯電を防ぎ、効率的に除電が可能です。
(クーロン力:同電位は反発、逆電位は引き合う力が発生する)
プラス帯電部:イオナイザから発生したマイナスイオンが吸引されて中和されます。
マイナス帯電部:イオナイザから発生したプラスイオンが吸引されて中和されます。
マイナスイオンは反発力で近付けず、逆帯電しません。
3. イオナイザー選定のポイントと導入時の注意点
イオナイザーを選定する際には、以下の要点に注意して導入を検討してください。
- アース端子の安定性:アース線を確実に配線する事は勿論ですが、イオナイザー内部のアース断絶による静電気トラブルを防ぐために、追加の電位センサや監視システムを用意する。
- ファンやエアー供給の監視機能:エアー監視機能やファンエラー検知機能を備えた製品を選ぶことで、除電効果を確実に維持できる。
- 逆帯電防止機能:パルス方式ではなく、高周波AC方式のイオナイザーを選ぶことで、逆帯電を防ぎ均一な除電効果が得られる。
4. 実際の製品と活用例
静電気対策として多くの工場で採用されているPanasonic製品は、様々な監視機能と逆帯電防止機能を備えており、製造ラインの安定稼働を支えます。
例えば、「ER-VW」は自動車部品製造などの精密な工程に最適なモデルであり、除電効果を高めるための機能を豊富に揃えています。
高速除電及びフィルムや樹脂部品の高電圧帯電対応や無風除電などに有利なパルスタイプのイオナイザー活用については次回ご案内します。
当社の具体的な提案・納入事例をご紹介いたします。
5.静電気対策ならESDコーディネーターを有する三和電材にお任せ!
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