イオナイザーの効果が無い?
静電気対策の見直しポイントと解決策
静電気は目に見えないため、イオナイザーを設置しても効果が無いと感じることがあります。しかし、静電気の発生原因や帯電状況を正しく見極めれば、適切な対応策を講じることが可能です。本記事では、静電気対策を検討している工場の保全担当者向けに、イオナイザーの適切な選定・設置・メンテナンス方法について詳しく解説します。

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1. 目的に適したイオナイザーを使用する
イオナイザーが期待通りの効果を発揮しない原因のひとつに、目的に合ったタイプを選定できていないことが挙げられます。ワークの帯電量や用途に適したイオナイザーを使用しないと、十分な除電効果が得られません。
① 帯電量の大きいワーク(高速搬送フィルム)
- 推奨タイプ: パルスACタイプ
- 理由: イオン発生量が多く、強力な除電が可能
- 適合機種: Panasonic ER-X032
- 補足: フィルム幅に合わせたバータイプが最適
② 静電気に弱いワーク(10V以下まで除電したい)
- 推奨タイプ: 高周波ACタイプ
- 理由: イオンバランス(ピークオフセット電圧)が小さく、均一な除電が可能
- 適合機種: Panasonic ER-VW、ER-VS02
- 実績: HDD組立ラインやEPB(電気式パーキングブレーキ)組立ラインで±5V以下の除電が認定
③ 除塵(異物除去)が目的(レンズの除塵など)
- 推奨タイプ: エア流量の大きいイオナイザー
- 理由: 高圧力で異物を吹き飛ばすことが可能
- 適合機種: Panasonic ER-VS02(対応ノズル ER-VAJT64+ER-AT50)
- 特徴: 業界最高クラスの0.7MPaのエア圧でも安定した放電を維持
2. イオナイザーのイオン発生原理別の特徴
イオナイザーには複数の放電方式があり、それぞれ特徴が異なります。使用方法を誤ると、逆に帯電してしまう可能性もあるため、適切な方式を選択することが重要です。
① パルスAC方式
- 特徴: 高電圧のプラス・マイナスイオンを交互に放出
- イメージ: 「大粒の雨」のようなイオン
- 長所: 強力な除電力
- 短所: 部分帯電しやすく、逆帯電のリスクがあるため電子部品の除電には不向き
② 高周波AC方式
- 特徴: 低電圧のイオンを細かく放出
- イメージ: 「粒の小さい霧雨」のようなイオン
- 長所: 均一な除電が可能、逆帯電しにくい
- 短所: 帯電量が大きいワークには除電力が不足する可能性あり
3. イオナイザーの設置、設定
イオナイザーの効果が無いと感じる原因のひとつに、適切な設置ができていないことが挙げられます。イオナイザーとワークの距離、風量、周囲の金属の影響を考慮しないと、十分な除電ができません。
設置の注意点
- 金属板や金属の柱の近くに設置しない
- 特にパルスACタイプは、周囲の金属にイオンが吸着されて効果が低下
- ワークに確実にイオン風が当たるよう調整
- 放電針がケースに覆われたタイプ(例:Panasonic ER-VS02)は外部影響を受けにくい
設定のポイント
- イオンバランス機能のON/OFFを適切に設定
- ファンタイプ・エアー供給タイプでは風量調整が重要
4. イオナイザーを正しく使用する
イオナイザーの放電針の状態が悪いと、イオンの発生量が低下し、除電効果が著しく減少します。そのため、定期的なメンテナンスが必須です。
メンテナンスの重要ポイント
- 放電針の先端を定期的に清掃
- ランプが点灯したら速やかに清掃
- 清掃しても1週間以内に再点灯する場合は放電針を交換
- ゴミの付着を低減し、寿命を伸ばした放電針を採用する(例:Panasonic ER-VS02)
5. 湿度管理の重要性
どのタイプのイオナイザーを使用しても効果が無いケースがあります。その一因として、環境の湿度が低すぎることが挙げられます。
湿度管理の対策
- 加湿器を設置し、湿度を40〜60%に維持
- 湿度が低い場合、イオナイザーの効果が低下するため、併用が有効
- 過去の事例: スマートフォン部品の詰まり防止に湿度を上げることで解決
イオナイザーの効果を最大化するためのポイント
イオナイザーの効果が無いと感じる場合は、次の点を見直してください。
- 目的に適したイオナイザーを選定
- 設置環境を最適化
- 定期的なメンテナンスを実施
- 湿度管理を徹底する
イオナイザーだけでなく、環境管理を組み合わせることで、静電気対策の効果を最大化できます。最適な機器選定や対策にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。